この愛すべき人間コボちゃんが、夏の由比ケ浜海岸に遊びに行ってる時、泳ぎ出し、沖へ向かった。私と江田は土用の海が危険で、クラゲが出て顎などを何度か刺された経験もしていたので用心して泳がなかったが、コボちゃんは我々よりも年上で一寸屈折した男だったので、男らしさを見せようとして泳ぎ出した気もしないでもないが、「やめといた方がいいんじゃない?」と言っても、「なーに、これしきの波なんか…」と言って泳ぎに行ってしまった。
私と江田は、一寸心配なので目を離さないようにしていたが、コボちゃんはどんどん沖の方へ行くので怖くなり、監視員に「早く救助してくれませんか。あんなに沖へ行くと…」と言ってるうちに、「あっ!沈んだ!溺れてる!」と監視の若者は叫び、仲間と共に舟で救助へ向かった。
暫時の後、監視小屋に運ばれて来たコボちゃんは意識がなく、青ざめた顔色だった。砂に寝せて水を吐き出させ、人工呼吸をやり、なんとか助けられたのだったが、この話は山崎氏にしてみれば触れられたくない話だろう。が、私には忘れ難い体験だったので書かせて貰った。コボちゃん御免。
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八幡宮の参道 段葛(だんかずら)にて
左より 山崎照雄氏、江田法雄氏、筆者
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